支援記録を書くとき、こんな一文になっていないでしょうか。「順番が待てませんでした」「課題に取り組めませんでした」。
事実ではあります。でも、この書き方には二つの問題があります。一つは、子どもを「できない子」として固定してしまうこと。もう一つは、次の支援につながる情報が、ほとんど残らないことです。
記録は、評価表ではありません。次の関わりのための、観察の記録です。今回は「できない」で止めない書き方を考えます。
「できない」を「どう取り組んだか」に変える
「順番が待てませんでした」を、もう一歩ふみこんで書いてみます。
「順番を待つ場面で、最初は前に出ようとしたが、スタッフが横に立つと10秒ほど待てた」。
同じ出来事でも、こう書くと情報がまるで違います。何がきっかけで、どこまでできて、何があれば待てたのか。次に同じ場面が来たとき、支援員は「横に立つ」という手がかりを持って関われます。
「できたか・できなかったか」の二択ではなく、「どんなプロセスだったか」を残す。これが、記録を支援につなげる第一歩です。
3つの視点で、プロセスを具体化する
プロセスを書こうとしても、慣れないうちは手が止まります。次の3つの視点を持つと、書きやすくなります。
- きっかけ:どんな場面・声かけ・環境で、その行動が起きたか。
- 子どもの動き:実際にどう振る舞ったか。表情や言葉も含めて。
- 支援の手がかり:何があると、うまくいったか(あるいは難しかったか)。
「難しかった」だけで終わらせず、この3つのどれか一つでも添えると、記録は次に使える情報になります。
前向きに書くことは、事実をゆがめることではない
誤解されがちですが、「前向きに書く」とは、できなかったことを隠したり、良く見せかけたりすることではありません。事実は事実として、ただし「できない」というレッテルではなく、「取り組みのプロセス」として残す、ということです。
その積み重ねは、保護者にも誠実に伝わります。「うちの子は、こういう場面でこう関わってもらえている」と分かることが、信頼になります。
記録の質を、負担なく揃える
とはいえ、忙しい現場で毎回このレベルの記録を書き続けるのは大変です。書く人によって、視点や具体性にばらつきも出ます。
私たちが作っている「そだちノート」は、支援員が話すだけで、その日の子どもの姿を観察記録の下書きに整えます。さらにAIがそっと問い返すことで、「そういえば、あの場面はどうだったか」と、書き手自身が観察の抜けに気づけます。AIは言語化を支える黒子で、子どもの姿に意味を見いだすのは、いつも先生です。
「できない」で止めない記録が、無理なく続けられる。そんな現場を、一緒につくっていけたらと思っています。