実務

漏えいが起きたとき、費用はいくらかかるのか ― 判決の金額と、対応にかかる費用

2026年10月28日株式会社KOTOHA

シリーズ「子どもの情報を守る ― 保育・療育の現場から」の第5回です。

情報の事故が起きたとき、施設の方がまず気になることの一つが「いくらかかるのか」だと思います。誰にでも起こりうることだからこそ、金額の感覚と、費用を誰が持つのかを、事故の前に知っておくと、慌てずに動けます。

この記事では、公表されている判決と、警察庁の資料から、わかっている範囲を整理します。責める記事ではありません。

① 本人への賠償:裁判で認められた金額

個人情報の漏えいで、裁判所が認めた金額は、事件ごとに事情が違います。公表されている例では、1人あたり数千円から数万円です。ここに書く金額は、本人への賠償(慰謝料と、弁護士費用の相当額)だけです。調査や通知、復旧などの費用は含みません(次の②で書きます)。

センシティブな情報で、二次被害があった例ほど、金額が上がっています。

人数が多いと、合計は大きくなります。たとえば100人分で、1人3,300円なら33万円、1人3万5,000円なら350万円です。これは、上の金額を単純にかけた計算例で、実際の賠償額を予測するものではありません。また、相場でもありません。 この幅は、性質の違う2つの判決の、低い側と高い側を並べたものです。金額は、漏れた情報の性質、二次被害の有無、人数、事業者の対応などで、大きく変わります。子どもの障害にかかわる情報のように、センシティブな情報の場合は、高い側の金額になることも考えておいたほうが安全です。

② 対応・復旧にかかる費用:本人への賠償より大きくなることがあります

事故のあとにかかるのは、本人への賠償だけではありません。原因を調べる費用、システムを直す費用、本人や保護者への通知、問い合わせの窓口、弁護士への相談、業務が止まる間の損失などです。事故のあとの流れは、第1回「子どもの障害にかかわる情報は、1件の漏えいでも国への報告が必要になることがあります」で書きました。

警察庁のまとめでは、2025年(令和7年)にランサムウェア(データを人質に取る攻撃)の被害を警察に報告した組織は226件で、約6割が中小企業でした。警察庁が被害に遭った組織にたずねたアンケートでは、調査と復旧にかかった費用の総額が1,000万円以上だった組織は、有効回答89組織のうち46組織(52%)でした。一方で、100万円未満で済んだ組織も16ありました。復旧にかかった期間は、1か月未満が有効回答107組織のうち60組織(56%)で、2か月以上かかった組織や、まだ復旧中の組織もありました。

ここで書いた数字は、システムが止まるタイプの攻撃の場合です。メールの誤送信やUSBメモリの紛失のように、漏れただけで、システムは動いている事故とは、かかる費用の性質が違います。それでも、人手と時間と、保護者への説明にかかる負担は、どの事故でも発生します。

費用は、誰が持つのでしょうか

記録や連絡のサービスなど、外部の事業者に情報を預けている場合でも、保護者や本人に説明する立場は、多くの場合、施設です。預け先の事故でも、施設は、預け先を監督する責任を負います(個人情報保護法第25条)。

この監督の責任とは別に、事故のときの費用を、施設と預け先のどちらがどこまで持つかは、両者の契約や利用規約の書き方で大きく変わります。「責任の範囲」「賠償の上限」「事故が起きたときの対応と連絡」といった項目に、何が書いてあるか。事故が起きてから読むのではなく、事故の前に、一度読んでおくことをおすすめします。上限額が書かれている場合は、その額が、自分の施設の人数に対して十分かどうかも、あわせて考えます。

明日からできること

  1. 使っている記録・連絡のサービスの契約・利用規約で、「責任の範囲」「賠償の上限」「事故のときの連絡と対応」「契約が終わったときのデータの扱い」がどう書かれているかを読む。分からない所は、事業者に質問する
  2. 賠償責任保険やサイバー保険に入っているか、入っているなら、事故対応の費用(調査、通知、問い合わせの窓口など)が対象に含まれるかを、保険の窓口に確かめる
  3. 事故の日に最初に連絡する先(自治体の担当課、システム会社、相談できる専門家)の連絡先を、一覧にしておく
  4. 「どんな情報が、何人分、どこにあるか」を数えておく。費用は、人数と情報の種類で大きく変わります
  5. 契約や保険を見直すときは、一人で決めず、法人の代表者や顧問の専門家と一緒に確かめる

もっと知りたい方へ(出典)

いずれも2026年10月28日に確認しました。

判決の金額は、弁護士による解説記事の整理に基づいています。この記事は一般的な情報提供であり、法的な助言ではありません。個別のご事情は、顧問の専門家や自治体の窓口にご相談ください。

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