シリーズ「子どもの情報を守る ― 保育・療育の現場から」の第4回です。
仕事でパソコンを使っていて、突然「ウイルスに感染しています。下の番号に電話してください」という画面が出て、警告音まで鳴る。落ち着いていれば偽物だと分かっても、忙しい現場で急に出ると、誰でも慌てます。
この記事では、2026年9月に自治体と社会福祉協議会が公表した2つの例と、警察庁の案内から、起きたことと、画面が出たときの動き方をまとめます。責める記事ではありません。
サポート詐欺とは
警察庁は、サポート詐欺を次のように説明しています。パソコンでインターネットを見ているときに、突然ウイルスに感染したかのような嘘の画面を出したり、警告音を鳴らしたりして不安をあおり、画面に書かれたサポート窓口に電話をかけさせる手口です。電話をかけると、サポートの名目で金銭をだまし取られたり、遠隔操作ソフトをインストールさせられたりします。偽の警告画面は、ウイルスに感染しているかどうかに関係なく表示されます。
起きたこと①:大阪市の放課後児童事業(2026年9月30日公表)
大阪市は、児童いきいき放課後事業の運営・管理を委託している事業者の活動室3か所で、サポート詐欺の被害があったと公表しました。職員が、パソコンに出た警告画面の電話番号に電話をかけ、「Microsoftサポート」を名乗る相手の指示に従って、遠隔操作用のアプリをインストールしていました。
見つかったきっかけは、事業者の事務局職員が、ある活動室の電話料金の明細に、海外への通話の履歴を見つけたことでした。調べると、5月23日に職員が電話をかけていたことが分かりました。他の活動室も点検したところ、1月31日と6月5日にも、同じ被害があったことが分かりました。外部の業者の調査では、第三者が遠隔操作アプリで、約15分から50分の間、パソコンを操作・閲覧した形跡がありました。調査できた範囲では、外部へデータを送った痕跡は見つからなかったとのことです。
ただし、最大で2,272名分の個人情報が、第三者に見られる状態にありました。内訳は、次のとおりです。
- 児童1,261名分の氏名、学年、生年月日、住所、通っている小学校名、アレルギーなど配慮の有無など。このうち配慮が必要な児童114名分は、支援学級などへの在籍状況、障がい・疾病などの名称、障害者手帳などの詳細、児童の様子も含まれていました
- 保護者953名分の氏名、続柄、電話番号など
- 職員58名分の氏名、電話番号
事業者は、9月29日から保護者に文書で謝罪と経緯の説明をし、9月30日にホームページに謝罪文を載せました。発表の時点で、お金の被害や個人情報の不正利用といった二次被害は、確認されていないとのことです。
発表では、原因を、事業者が毎年サポート詐欺への注意喚起をしていたにもかかわらず、職員がこの手口に気づかず、被害に遭ったことと説明しています。再発防止として、全活動室のパソコンに、偽の警告画面を遮断するWebフィルタリングソフトを導入し(9月28日までに全活動室で運用を始めたとのことです)、周知と、職員向けの教育テストでの注意喚起を続けるとしています。個人情報保護委員会への報告については、発表に記載がありません。
起きたこと②:四街道市社会福祉協議会の居宅介護支援事業所(2026年9月29日公表)
四街道市社会福祉協議会は、居宅介護支援事業所の職員が、8月30日の午後1時ごろ、業務用のパソコンでインターネットを見ているときに、偽の警告画面をきっかけに、約30分間、外部から遠隔操作できる状態になったと公表しました。
外部の専門業者による調査をしても、その間に情報が実際に見られたか、外に送られたかは、確認できませんでした。対象は利用者33名で、漏えいのおそれがある情報は、氏名、介護認定区分、利用している介護サービス、かかりつけ病院名などです。協議会は、漏えいの有無を明確に示せない状況であること自体が、利用者に不安をかけると述べ、お詫びしています。個人情報保護委員会への報告と、対象になりうる利用者への個別の連絡は済ませたとのことです。再発防止として、全職員への教育、不審な警告が出たときの社内報告の手順の整備、遠隔操作ソフトのインストール制限などをあげています。
この2件から言えること
- 遠隔操作の時間が短くても、見られたかどうかは分からなくなります。四街道市の例は約30分でしたが、調査でも、見られたか、外に送られたかを確認できませんでした
- 気づくのが遅れることがあります。大阪市の例では、被害から気づくまで、どの活動室も1か月以上かかり、いちばん長いところで約5か月でした。きっかけは、電話料金の明細でした
- 注意喚起をしていても、起きることがあります。いざ画面が出ると、慌てて動いてしまうものです。周知に加えて、画面を遮断する仕組みと、慌てても動ける手順が必要になります
- パソコンに入っている情報が多いほど、見られる範囲が広がります。大阪市の例では、1台のパソコンで見られる状態になった情報が、児童、保護者、職員の分あわせて、最大2,272名分でした
明日からできること
- 画面が出たら、電話をかけない。警察庁は、偽の画面に出る番号に電話せず、画面の指示でアプリを入れないよう案内しています。画面が消せないときは、ブラウザを終了します。ブラウザが閉じられないときは、「Esc」キーを長押ししながら「×」を押す、または「Ctrl」「Alt」「Delete」を同時に押してタスクマネージャーからブラウザを終了する方法が案内されています。分からないときは、IPAの安心相談窓口(電話 03-5978-7509、平日10:00〜17:00。土日祝日・年末年始を除く)に聞けます
- 「画面が出たら、一人で対応せず、すぐ○○さんに伝える」を決める。誰に、どう伝えるかを決め、伝えた人を責めないことも、あわせて職員に話しておきます。早く伝えてもらえるほど、遅れて気づく事態を減らせます
- 電話をかけてしまったときの手順を、紙にして、パソコンの近くに貼る。警察庁の案内では、次のことが示されています。ネットワークから切断する(LANケーブルを抜く、Wi-Fiを切る)。ウイルスチェックをして、インストールしたアプリを削除する(可能なら初期化し、パスワードを変更する)。お金を払ったなら、カード会社などに連絡する。画面やインストールしたソフトが分かる資料、支払いの履歴を保存する。警察に通報・相談する。加えて、個人情報にかかわるおそれがあるときは、自治体の担当課や顧問の専門家にも連絡します(事故が起きたときの流れは、第1回「子どもの障害にかかわる情報は、1件の漏えいでも国への報告が必要になることがあります」で書きました)
- 電話料金の明細と、パソコンの利用状況を、月に一度は見る。大阪市の例は、海外への通話履歴が見つかったことで、被害が分かりました
- パソコンの守りを見直す。OSとソフトウェアを最新にし、ウイルス対策ソフトを入れる(警察庁の案内)。そのうえで、偽の警告画面を遮断するフィルタリングや、遠隔操作ソフトを入れられない設定ができるかを、システム会社に聞いてみます。あわせて、そのパソコンに、どんな情報が、何人分入っているかを数えておきます
もっと知りたい方へ(出典)
いずれも2026年10月28日に確認しました。
- 大阪市「児童いきいき放課後事業運営・管理事業者における個人情報の漏えいの可能性について」(2026年9月30日):https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/kodomo/0000688056.html
- 四街道市社会福祉協議会「個人情報漏えいの疑いのある事案の発生に関するお詫びとご報告」(2026年9月29日):https://www.yotsukaido-shakyo.or.jp/info.php?id=941
- 警察庁「サポート詐欺対策」:https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/countermeasures/support-fraud.html
- IPA「情報セキュリティ安心相談窓口」(相談の受付時間):https://www.ipa.go.jp/security/anshin/about.html
この記事は一般的な情報提供であり、法的な助言ではありません。個別のご事情は、顧問の専門家や自治体の窓口にご相談ください。
そだちノートの情報の取り扱いは、情報の取り扱いについてに書いています。