「理学療法士がいれば算定できるのか」「個別支援計画とは別に、何を作るのか」。こうした質問を受けることがあります。
専門的支援実施加算は、理学療法士等による支援が必要な子どもに対して、理学療法士等が個別・集中的な支援を、計画的に行った場合に算定する加算です。配置と届出に加え、「専門的支援実施計画」の作成、保護者の同意、支援した日時と内容の記録が、通知で求められています。千葉市が公表した運営指導の結果にも、計画と記録の不備が挙げられている加算です。
この記事では、告示、留意事項通知、国のQ&Aにもとづいて単位数・回数の上限・算定要件を整理し、「何をどう記録しておけば、後から要件を満たしていたと読み取れるか」を架空の記録例で示します。
この記事で確認した原典
- 告示:児童福祉法に基づく指定通所支援及び基準該当通所支援に要する費用の額の算定に関する基準(平成24年厚生労働省告示第122号)。最終改正は令和8年3月31日こども家庭庁告示第5号で、令和8年6月1日から適用されている版。児童発達支援は「第1の8」、放課後等デイサービスは「第3の6」。
- 留意事項通知:「児童福祉法に基づく指定通所支援及び基準該当通所支援に要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成24年3月30日障発0330第16号)。最終改正は令和8年5月28日付こ支障第147号です。こども家庭庁が掲載している改正後全文は、その一つ前の令和8年3月31日付こ支障第88号による改正の版(令和8年4月2日掲載)で、第147号の改正は新旧対照表(令和8年5月28日掲載)で示されています。第147号は人員基準欠如減算の特例的な取扱いに関する改正で、この記事で扱う専門的支援実施加算の取扱いは変わっていません。児童発達支援の「専門的支援実施加算の取扱い」(第二の2の(1)の⑫)に詳しい定めがあり、放課後等デイサービスはこれを準用しつつ、回数の上限だけ別に定めています(第二の2の(3)の⑪)。
- 運営指導の公表資料:千葉市「令和7年度障害児通所支援事業者への運営指導の結果について」(資料9、令和8年3月19日、障害福祉サービス事業者説明会)。
- 確認日:2026年10月18日
- 報酬改定Q&A:令和6年度報酬改定(障害児支援)に関するQ&A(こども家庭庁支援局障害児支援課の事務連絡)のVOL.1(令和6年3月29日)問16・問17、VOL.3(令和6年5月2日)問9、VOL.4(令和6年5月24日)問1に、この加算の答えがあります。令和8年度の報酬改定Q&A(VOL.1・VOL.2)には、この加算の記載は見当たりませんでした。
- 注意:告示の本文は法令データベースの溶け込み版で確認しています。法的に確定させる場面では、官報とあわせてご確認ください。
専門的支援実施加算とは
通知は趣旨を、理学療法士等による「個別・集中的な支援を計画的に実施した場合に算定するもの」と説明しています。
似た名前の専門的支援体制加算は、理学療法士等を常勤換算で1以上加配する「体制」の加算です(児童発達支援・放課後等デイサービスとも)。一方、専門的支援実施加算は、子どもごと・回ごとに、計画にもとづいて支援を行ったときに算定する「行為」の加算です。
単位数と回数の上限
単位数は、児童発達支援と放課後等デイサービスで同じです。
| サービス | 単位数 | 1月の算定限度回数 |
|---|---|---|
| 児童発達支援 | 150単位/回 | 月利用日数が12日未満:4回、12日以上:6回 |
| 放課後等デイサービス | 150単位/回 | 月利用日数が6日未満:2回、12日未満:4回、12日以上:6回 |
放課後等デイサービスだけ、6日未満の区分があります。告示は、児童発達支援は「4回又は6回」、放課後等デイサービスは「2回、4回又は6回」を限度に、1回につき所定単位数を加算すると定めています。区分は、通知では「当該事業所における対象児の月利用日数」で判定します。
対象の専門職(理学療法士等)の範囲
通知が示す「理学療法士等」は、次のとおりです。
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 保育士(保育士として5年以上児童福祉事業に従事した者に限る)
- 児童指導員(児童指導員として5年以上児童福祉事業に従事した者に限る)
- 心理担当職員
- 視覚障害児支援担当職員
保育士と児童指導員の経験年数は、資格取得または任用からの児童福祉事業の経験で数えます。この点は通知が注意を促しています。
理学療法士等の「配置」は、単なる配置で差し支えないとされています。基準上置くべき従業者や、児童指導員等加配加算・専門的支援体制加算の加配人員によることも可能です。ただし、外部から派遣された者による支援は算定できません(よくある質問を参照)。
算定要件を整理する
通知の定めを、記録との関係がわかるように並べます。
1. 理学療法士等を1以上配置し、届出をしている。 告示は、理学療法士等を1以上配置するものとして、都道府県知事(指定都市等は市長)に届出を行った事業所で算定すると定めています。
2. 専門的支援実施計画を作る。 理学療法士等が、子どもごとの通所支援計画(個別支援計画)を踏まえて、その専門性にもとづく評価と、通所支援計画に則った支援であって5領域のうち特定または複数の領域に重点を置いた支援を行うための計画を作成します。通知は、この計画を「専門的支援実施計画」と呼んでいます。5領域は「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」です。
3. 個別支援計画とは別に作る。 通知は、専門的支援実施計画を、通所支援計画を踏まえて作成する計画として定めています。国のQ&A(令和6年度 VOL.1 問16)は、専門的支援実施計画は個別支援計画とは別に作成し、あらかじめ保護者の同意を得ることが必要だとしています。記載する項目としては、専門職によるアセスメントの結果、5領域のうち特に支援を要する領域、目指す達成目標、目標のための具体的な支援の内容、支援の実施方法などが想定されています。また、告示は回数の限度を、個別支援計画(児童発達支援計画など)に位置付けられた支援の日数に応じて定めています。
4. 計画の作成・見直しの際に、子どもと保護者へ説明し、同意を得る。 通知は、作成と見直しの際に、対象児と保護者に説明するとともに、同意を得ることを求めています。
5. 実施状況を把握し、必要に応じて見直す。 計画の実施状況を把握し、対象児の生活全般の質を向上させるための課題を把握して、必要に応じて計画を見直します。
6. 提供時間は少なくとも30分以上。 専門的支援の時間は、その日の支援時間の全部である必要はありませんが、少なくとも30分以上を確保します。
7. 個別が基本。小集団も可能。 個別での実施を基本としつつ、個々のニーズを踏まえた支援を確保したうえで、小集団(5名程度まで)での実施も可能です。理学療法士等とは別の職員を配置したうえで、小集団を組み合わせて(2つの小集団まで)実施することもでき、小集団ごとに人員基準を満たす必要はないとされています(国のQ&A 令和6年度 VOL.1 問17)。いずれの場合も、支援を行うのは理学療法士等です。
8. 実施した日ごとに、日時と支援内容の要点を記録する。 理学療法士等が専門的支援を実施した場合には、加算の対象児ごとに、支援を行った日時と支援内容の要点に関する記録を作成します。
9. 計画未作成減算を受けているときは算定しない。 告示のただし書は、児童発達支援計画(放課後等デイサービスでは放課後等デイサービス計画)が作成されていないことによる減算(基本報酬の注3(2)、放課後等デイサービスは注4(2))を算定しているときは、この加算を加算しないと定めています。
10. 共生型の事業所の場合。 告示のただし書には、共生型サービス体制強化加算(児童発達支援は注11、放課後等デイサービスは注10の、イまたはロ)を算定していないときは加算しない、との定めもあります。共生型サービス体制強化加算は共生型の事業所だけが対象の加算で、イとロはどちらも児童発達支援管理責任者を配置している区分です。共生型でない事業所には関係しない定めと読むのが自然ですが、これは告示の条文からの当社の読み方です。個別の扱いは自治体にご確認ください。
運営指導で見られる点
千葉市が公表している令和7年度の運営指導の結果(令和8年3月19日・資料9)には、「各種加算の算定に関すること」の中に、専門的支援実施加算について次の3点が挙げられています(要約)。
- 理学療法士等が、5領域のうち特定または複数の領域に重点を置いた支援を行うための専門的支援実施計画を作成しないまま、加算を算定している。
- 理学療法士等が支援を行っていないのに、加算を算定している。
- 対象児ごとに、専門的支援の実施記録(具体的な支援内容・支援担当職員名等)を作成しないまま、加算を算定している。
この3点は、要件の2(計画)、理学療法士等が実施すること、8(記録)に対応しています。なお、3点目の「支援担当職員名」は、通知が求める記録事項(日時と支援内容の要点)には明記されていません。ただ、誰が実施したかを記録から確認できるようにしておくと、2点目に備えられます。通知が直接求めている項目ではありませんが、当社は実施者を記録に残すことをおすすめします。
自治体によって確認の仕方や運用は異なります。お住まいの自治体の通知もあわせてご覧ください。
記録の残し方|架空の例10組
通知が求める記録は、支援を行った日時と支援内容の要点です。ただ、「専門的な支援をした」とだけでは、計画にもとづく支援か、誰が何分行ったかが後から読み取れません。
下の例は、すべて架空です。読み取れる書き方が唯一の正解というわけではありません。算定できるかどうかは、記録の書き方ではなく、実際に要件を満たしていたかで決まります。
例1|実施日時(開始と終了)
- 弱い書き方:「A児、専門的支援を実施。」
- 読み取れる書き方:「10/6 14:30〜15:10(40分)、A児に個別で専門的支援を実施。」
例2|実施した職種と職員
- 弱い書き方:「担当職員が対応。」
- 読み取れる書き方:「実施者:作業療法士・職員X。」 (保育士・児童指導員は「保育士(経験5年以上)」のように要件を確認できる形で残すことを、当社はおすすめします)
例3|計画との対応(重点領域)
- 弱い書き方:「手先の遊びを行った。」
- 読み取れる書き方:「専門的支援実施計画の重点領域『運動・感覚』に対応。ひも通しの遊びで、指先の力加減を調整する活動を行った。」
例4|子どもの反応
- 弱い書き方:「よく頑張った。」
- 読み取れる書き方:「活動の切り替え時に『まだやる』と言って泣く場面があった。タイマーを見せて予告すると、30秒ほどで次の活動に移った。」
例5|小集団での実施
- 弱い書き方:「グループで実施。」
- 読み取れる書き方:「10/9 15:00〜15:40、A児を含む4名の小集団で、言語聴覚士・職員Yが実施。A児の重点領域『言語・コミュニケーション』に沿い、絵カードで要求を伝える活動を行った。A児分として別に記録。」
例6|保護者への説明と同意(計画の作成時)
- 弱い書き方:「計画について保護者に話した。」
- 読み取れる書き方:「9/28 専門的支援実施計画(案)を母に説明。重点領域と月の実施回数の見込み(4回)を伝え、同意を得た。」
例7|実施状況の把握と見直し
- 弱い書き方:「様子を見ている。」
- 読み取れる書き方:「10/30 実施状況を確認。4回のうち3回で課題に最後まで取り組めた。次月は難易度を一段階上げる方針とし、計画を見直す。母への説明と同意は11/4の予定。」
例8|保護者への共有
- 弱い書き方:「迎えのときに伝えた。」
- 読み取れる書き方:「10/6 お迎え時に母へ、この日の支援内容(ひも通し)と指先の力加減の様子を口頭で共有。家庭で試せる遊びとして洗濯ばさみ遊びを紹介した。」
例9|30分に満たなかった日(算定対象にしない場合)
- 弱い書き方:「体調不良のため短時間で実施。」(算定したのかどうか分からない)
- 読み取れる書き方:「10/13 14:30〜14:50(20分)。A児の体調不良で中断。30分に満たないため、加算の対象外として記録。」
例10|理学療法士等が実施しなかった日(算定対象にしない場合)
- 弱い書き方:「いつもの課題を実施。」
- 読み取れる書き方:「10/16 担当の作業療法士が休みのため、他の職員が日常の活動として実施。計画にもとづく専門的支援ではないため、加算の対象外として記録。」
共通するのは、次の5点です。
- 日時(開始と終了)を残す。 30分以上を確保できたかを、確認できる。
- 実施した職種と職員を残す。 理学療法士等が実施したことを確認できる。
- 計画との対応を示す。 専門的支援実施計画の重点領域と、その日の支援を結び付けられる。
- 支援内容の要点を、具体的に残す。 「何を、どのように行い、子どもがどう反応したか」が読み取れる。
- 算定しない日も、そう分かるように残す。
なお、通知が直接求めているのは日時と支援内容の要点です。実施者の職種、子どもの反応、保護者への共有まで書く運用は、当社の考えです。自治体の指導の方針に合わせてください。
よくある質問
Q. 理学療法士を置いていれば、算定できますか。 A. 配置と届出だけでは算定できません。専門的支援実施計画を作り、保護者の同意を得て、計画にもとづいて支援し、日時と内容の要点を記録することが、通知で求められています。
Q. 個別支援計画に書いてあれば、専門的支援実施計画は別に作らなくてよいですか。 A. 別に作る必要があります。国のQ&A(令和6年度 VOL.1 問16)は、専門的支援実施計画は個別支援計画とは別に作成し、あらかじめ保護者の同意を得ることが必要だと答えています。千葉市の公表資料でも、実施計画を作成しないまま算定している例が挙げられています。
Q. 外部から来てもらう専門職の支援でも算定できますか。 A. 算定できません。国のQ&A(令和6年度 VOL.3 問9)は、この加算で配置すべき従業者とは、事業者と雇用契約を結んで事業所に配置されている者などを指すとしたうえで、他の法人などから専門職の訪問を受けるなど、外部から派遣された者が支援を行った場合は算定できない、と答えています。
Q. 児童発達支援管理責任者が不在の間は、算定できますか。 A. 児童発達支援管理責任者が欠如している状態では、算定できません(国のQ&A 令和6年度 VOL.4 問1)。あわせて、告示のただし書は、個別支援計画(児童発達支援計画など)が作成されていないことによる減算を算定しているときも、この加算を加算しないと定めています。休暇などで一時的に出勤していない日が「欠如」に当たるかなど、個別の判断は自治体にご確認ください。
まとめ
専門的支援実施加算は、①理学療法士等の配置と届出、②個別支援計画とは別に作る専門的支援実施計画と、子ども・保護者の同意、③日時と支援内容の要点の記録、がそろって、はじめて説明できる加算です。専門職がいて、実際に支援をしていても、計画と記録が残っていなければ、後から要件を満たしていたことを示すのは難しくなります。
1回あたり150単位です。計画・同意・記録の3つを、支援の流れの中で無理なく残せる形にしておくことが、運営指導で説明するときにも、日々の支援を振り返るときにも、手がかりになります。
記録を、日々の支援の中で残すために
そだちノートは、支援員が話すと、AIが短い問いかけで場面を聞き返し、施設の中で共有する記録文に整えるアプリです。そこから、先生が確認して送る保護者向けのおたよりと、明日以降に試すこと(観察する点・関わり方の案)ができます。個別支援計画は、PCでの取り込み(PDF)と、記録からの下書き(プロプラン・児童発達支援管理責任者が確認して確定)に対応しています。専門的支援実施計画をつくる画面や、加算の点検・算定の見込みは、いまはありません(加算の点検は準備中です)。記録の判断と、加算を算定してよいかどうかの判断は、いつも事業所が行います。
- 事業所の運営の課題を整理したい方は、経営セルフ診断(無料)をお試しください。
- サービスの概要はサービス紹介資料(PDF)で、導入に使える資料(はじめかたガイド・保護者向けの説明チラシなど)は導入サポートのページでご覧いただけます。
- 実際に使ってみたい方は、無料プラン(子ども3人・スタッフ2名まで)からアプリをお試しいただけます。
※この記事は、2026年10月18日時点の告示・留意事項通知・国のQ&Aにもとづく一般的な情報です。自治体によって運用が異なる場合があります。個別の算定の判断は、お住まいの自治体や、所管の窓口にご確認ください。